完成車の仕入れや組み立て、納車の負担は減らしたい。それでも、地域の人から頼まれるパンク修理やタイヤ交換は続けたい。
その場合は、新車販売と修理を同じ日に切り替えようとしないことです。注文済みの車両や販売後の点検など、新車販売に伴う仕事は受付終了後も残ります。
「販売終了日」だけでは決められない
最初に、日付を分けて考えます。
- 新しい注文を受け付けなくなる日
- 注文済み車両の納車を終える時期
- 店頭在庫の販売を終える時期
- 修理中心の営業へ切り替える日
一つの日にそろえる必要はありません。先に新規注文を止め、残っている約束を終えてから修理中心へ移るほうが、顧客にも説明しやすくなります。
注文と販売後の約束を洗い出す
在庫を値下げする前に、販売台帳、注文書、修理受付票、入金記録、メールやメッセージを照合します。
- 注文済み車両の車種、入荷予定、入金額、納車前作業
- 販売時に案内した無料点検、調整、保証の内容と期限
- 修理で預かっている車両、注文部品、預かり金
- 顧客のために取り置いている部品
- 貸出中の代車、鍵、付属品と返却予定日
注文を予定どおり履行するのか、顧客と話し合って取りやめるのかは、契約内容と仕入れ状況によって変わります。返金やキャンセル料を一律に決めず、判断が難しい案件は弁護士などへ確認します。
修理は件数ではなく時間で見る
修理依頼が多くても、それだけで店舗を維持できるとは限りません。
一定期間の受付記録から、作業ごとの請求額、部品原価、受付から引き渡しまでの時間を集計します。部品探し、試走、再調整、電話連絡に使った時間も含めます。季節による件数の違いも見ておきます。
短時間の調整と、故障箇所の確認に時間を要する修理を同じ一件として数えると、必要な稼働時間を見誤ります。他店購入車や持ち込み部品をどこまで受け付けるかも、部品の適合確認や作業後の対応を含めて決めます。
現在の広さを維持しにくければ、営業時間や売場面積を縮める方法もあります。ただし、賃貸店舗の区画や用途を変える場合は、工事や告知の前に貸主と契約内容を確認します。
残す在庫を修理実績から決める
すべての部品を修理用として残す必要はありません。品名、数量、仕入日、仕入先、顧客との約束の有無を記録し、次のように分けます。
- 今後も使う見込みのある汎用部品
- 特定の顧客のために取り寄せた部品
- 特定車種にしか使えない部品
- 未販売の完成車、展示車、試乗車
- 借用品、リース品、仕入先から提供された什器や看板
返品できるかは仕入先との条件によります。値下げ販売、他店への譲渡、廃棄を決める前に、返品条件と送料を確認します。在庫の処分に伴う会計・税務処理は、在庫表を用意して税理士へ相談します。
バッテリー、廃タイヤ、潤滑油などは、品目や地域によって処分方法が異なります。一般ごみに混ぜず、メーカー、自治体、処理事業者の案内を確認します。
仕入れをやめた後に受けられる修理を確かめる
新車の取引を終えると、補修部品の注文、保証修理の受付、ブランド表示などの条件が変わることがあります。機種によっては専用部品や診断機器が必要です。
メーカーや卸には、次の点を記録が残る方法で確認します。
- 新車の注文終了後も補修部品を注文できるか
- 過去に販売した車両の保証相談を誰が受け付けるか
- 製品回収や無償点検が生じた場合の連絡方法
- 診断機器、看板、カタログなどの返却が必要か
- 店頭やウェブサイトでブランド名を表示できるか
回答がそろうまでは、「これまで販売した車種はすべて修理できます」と案内しないほうがよいでしょう。対応できない車種や作業が分かったら、受付前に確認できる形で示します。
顧客には、何をやめて何を残すかを伝える
注文済みの顧客には、店頭で公表する前に個別に連絡します。その後、新車の注文受付終了日、修理を続けること、受付できる作業、営業時間、販売済み車両の相談窓口を案内します。
当店は○月○日をもって、新車の注文受付を終了します。修理は継続しますが、車種や部品の供給状況によりお受けできない作業があります。ご注文済みの車両と、販売時にご案内した点検・保証については、対象のお客様へ個別にご連絡します。
これは案内文の骨組みです。実際の契約やメーカーからの回答に合わせて書き換えます。
修理履歴や連絡先を保管するなら、利用目的、保管方法、不要になった記録の扱いも見直します。別の修理店へ顧客情報を渡す場合は、単なる紹介なのか事業の承継なのかによって法的な扱いが異なります。相手と利用目的が決まらないまま名簿を渡してはいけません。個人情報保護委員会のガイドラインを確認し、判断に迷う場合は弁護士などへ相談します。
中古車販売を残すなら別に確認する
下取りや買取りを行い、中古自転車として販売する場合は、古物営業に関する許可や手続を確認する必要があります。営業形態を整理したうえで、主たる営業所を管轄する警察署へ相談してください。制度の概要は警察庁の古物営業・質屋営業に関する案内でも確認できます。
自転車店の表示や点検制度に関する名称を掲げている場合は、修理中心へ変えた後も使用条件を満たすか、その制度の運営者へ確認します。
まだ結論が出ていなくても整理はできる
修理中心で続けるか、いずれ店を閉じるか。今すぐ決める必要はありません。
匿名相談では、顧客名や車体番号を伏せ、新車販売と修理のおおよその売上構成、残っている注文の件数、固定費、在庫の区分、メーカーへの確認事項を伝えると、悩んでいる部分を整理しやすくなります。
販売を縮小した経験がある方は、何を残し、どの約束の整理に時間がかかったかを事業の物語として投稿することもできます。成功談でなくても、判断の途中で分かったことは、同じ悩みを持つ店主の手がかりになります。