草刈りや低木の手入れは続けたい。しかし、脚立や高所作業車を使う庭木の剪定は、体力や安全面から難しくなってきた。
それなら、造園業をすべてやめる必要はありません。高い木の作業だけを別の事業者へ任せる方法があります。
ただし、顧客から見れば「庭の手入れ一式」が一つの仕事になっていることもあります。作業者だけを替えると、見積もり、支払先、事故や破損が起きたときの連絡先が曖昧になります。
協力先を探す前に、まず一軒分の年間管理をほどいてみます。
一軒分の年間管理を作業別に書き出す
年間管理という名称でも、時期も負担も違う仕事が含まれています。過去の見積書、作業日報、写真、請求書、顧客との連絡記録を一軒分だけ並べます。
| 作業 | 確かめること | 今後決めること |
|---|---|---|
| 高い木の剪定 | 対象の木、希望時期、作業範囲、車両の進入経路、建物や電線との位置関係 | 協力先へ任せるか、今後は受けないか |
| 生け垣・低木の手入れ | 対象範囲、仕上げ方、使う道具 | 自分が続ける範囲 |
| 草刈り・除草 | 実施時期、刈草の扱い、敷地へ入る際の注意 | 従来どおり続けられるか |
| 施肥や薬剤を使う作業 | 対象、実施記録、ペットや近隣への配慮 | 誰が判断し、誰が説明するか |
| 枝葉の片付け | 集積、積み込み、運搬、処理を現在誰が担っているか | 担当と費用 |
| 荒天後の連絡 | 倒木や折れ枝について、これまで案内してきた範囲 | 緊急時の窓口と、対応できない仕事 |
「毎年同じ時期に来てほしい」と口頭で頼まれている仕事も記録します。ただし、正式な注文、相談、次回時期の目安は分けます。
すでに受けた仕事は、予定日、見積額、前受金、購入済みの資材まで確かめます。年間料金を先に受け取っている場合、未実施分の扱いを回数だけで決められるとは限りません。契約内容と実施記録を基に、顧客ごとに整理します。
窓口を残すのか、直接契約に変えるのか
高い木の作業を任せる形は、大きく二つあります。
現在の事業者が窓口を続ける
現在の造園業者が顧客から注文を受け、見積書や請求書を発行し、高い木の作業を協力先へ委託する形です。
この場合は、現地調査、作業方法の判断、追加作業の承認、代金の受領、破損ややり直しへの対応を誰が担うのか決めます。顧客との契約上、外部委託ができるか、事前の説明や承諾が必要かも確かめます。
協力先との書面には、対象となる木と作業範囲のほか、日程変更、現場の養生、枝葉の処理、事故時の報告、追加作業、再作業の扱いを記載します。
顧客と専門事業者が直接契約する
現在の事業者は低木や草刈りだけを受け、高い木については候補先を案内する形です。専門事業者が現地を確認し、見積もり、契約、請求、作業後の対応を行います。
紹介だけなのか、日程調整まで行うのか、作業の完成まで管理するのかを曖昧にしません。「紹介しただけ」と言いながら、現在の事業者が金額や作業方法を決めれば、顧客には責任の所在が伝わりにくくなります。
どちらの形にするかは、現在の契約と、これから引き受けられる責任で決めます。
一式価格をそのまま割り算しない
庭全体を一式で見積もっていた場合、総額から高い木の分だけを差し引いても、残す仕事の適正な価格になるとは限りません。
高い木の作業には、現地確認、車両や機材の手配、作業人数、枝葉の積み込みや運搬が伴います。一方、その作業を外しても、訪問、道具の準備、顧客との連絡、清掃に必要な時間は残ります。
完了済みの仕事をたどり、作業時間、移動、資材、枝葉の処理、連絡、再訪を分けます。記録のない費用を推測で埋めず、次の仕事から記録します。
協力先には、現場を見たうえで見積もってもらいます。必要な機材や作業方法が決まる前に、現在の事業者が顧客へ「この金額でできる」「この日に終わる」と約束しないことも大切です。
候補探しに顧客名簿は要らない
対応できる事業者を探す段階で、顧客の氏名、正確な住所、電話番号を渡す必要はありません。個人を特定できないおおよその地域、木の高さや本数ではなく現場写真で確認できる作業条件、希望時期、車両の進入条件など、対応可否の判断に必要な範囲から伝えます。
写真には、表札、車の番号、住居内部、近隣の人が写ることがあります。位置情報などの付加情報も含め、送る前に確かめます。候補から外れた事業者に渡したデータをどう削除してもらうかも決めておきます。
候補先が絞られたら、契約の形と情報を共有する相手を顧客へ説明し、現地確認に必要な情報だけを渡します。
個人データの取扱いは、現在の事業者からの委託なのか、顧客と専門事業者との直接契約なのかで整理が変わります。判断に迷う場合は、個人情報保護委員会のガイドラインを確認し、弁護士などへ相談します。
通常の一件で流れを試す
全面的に切り替える前に、顧客の了承を得られ、作業範囲を分けやすい一件で、連絡から完了までの流れを確かめます。緊急性の高い倒木や、現場条件を十分につかめない仕事は試行に向きません。
- 現在の事業者と協力先が、必要に応じて同じ現場を確認する
- 低木の作業と高い木の作業を、見積書でも分ける
- 契約相手、支払先、当日の責任者、問い合わせ先を顧客へ伝える
- 作業後に、追加作業、枝葉の処理、顧客からの連絡を記録する
一件を終えると、現在の事業者に残る調整時間も見えてきます。紹介や日程調整が増え、かえって負担が重くなるなら、窓口の持ち方を見直します。
機材、保険、枝葉の処理を分けて考える
協力先へ車両、脚立、機械などを貸すなら、所有者、点検、運搬、保管、破損時の負担を決めます。現在加入している保険が、外部事業者の作業や貸した機材による事故まで補償するとは限りません。関係する事業者が、それぞれ保険会社や代理店へ補償範囲を確かめます。
切った枝葉を誰が積み、誰が運び、どこへ持ち込むかも見積もりに含めます。廃棄物の区分や運搬・処理に必要な手続は、排出の状況や地域によって変わります。分からない場合は、自己判断で処理先を決めず、市区町村の廃棄物担当窓口へ具体的な条件を伝えて確認します。
自分でそろえるもの、外へ確かめるもの
事業者自身で先にそろえられるのは、顧客ごとの作業内容、残っている約束、自分が続けたい仕事、使用している機材、過去の作業時間と費用です。
一方、次の事項は個別の条件で結論が変わります。
- 顧客との契約変更、外部委託、事故時の責任分担は、必要に応じて弁護士へ確認する
- 協力先が法律上のフリーランスに当たる場合の取引条件の明示などは、公正取引委員会のQ&Aで確認する
- 協力先が労働基準法上の労働者に当たるかは、契約の名称だけでなく働き方の実態から判断されるため、判断が難しい場合は厚生労働省の説明を確認し、社会保険労務士、弁護士、労働基準監督署などへ相談する
- 顧客から受け取る代金、外注費、紹介に伴う収入の会計・税務処理は、税理士へ確認する
- 現場に必要な安全対策、機材、資格や教育は、協力先や所管する窓口へ具体的な作業条件を示して確認する
高い木の剪定を手放すことは、造園業をすべて終えることではありません。
一軒分の仕事を分ければ、自分が続けられる範囲と、別の事業者の力が必要な範囲が見えてきます。その記録は、将来さらに仕事を縮めるときや、事業全体の承継を考えるときにも使えます。
匿名相談を利用するなら、顧客名や住所を伏せ、やめたい作業、残っている年間管理の約束、考えている契約の形、機材と枝葉処理の状況を書き出します。すでに仕事の分け方を変えた経験がある方は、判断のきっかけや顧客への伝え方を、個人が特定されない形で事業の物語として投稿する方法もあります。