今の自分では以前と同じペースで作業を続けられないが、事業を丸ごと売るほどでもない──そんな状況なら、まず「次の担当者にどこまで任せたいか」を決めてください。範囲が定まれば、用意すべき情報が絞れます。
優先は短期的に作業を止めないことです。権利移転や長期運用の細かい決めごとは後回しにして、開けば同じ成果物が作れるファイルと手順を先にまとめましょう。
優先順位の付け方
時間がないときの優先順(実務向け): 1) 進行中案件の最終版と再現手順、2) 再現に必須の設定やプラグイン、スクリプトの情報、3) 再利用頻度の高い素材(高解像度画像・マスター原稿)、4) 契約やライセンスの要点。作業中の一時ファイルや古いログは後回しで構いません。
制作物ごとに残すべき具体項目
目的は単純です:開いて同じものを作れること。項目別に最低限を示します(業種を問わず適用できる実例)。
・原稿系:最終版テキスト(エクスポートも可)、差分の要点、原稿提供者や校正者の連絡先。
・デザイン系:元データ(AI/PSD/Sketchなどのソース)、埋め込みフォントの有無、使用したプラグイン名とバージョン、書き出し用プリセット。フォントが有償なら購入履歴と期限を記録。
・EC用画像:オリジナルの高解像度ファイル、用途(商品ページ/サムネイル等)、ファイル名の付け方のルール。
・出版物:版元の連絡先、校正差分の要約、入稿用フォーマットの所在。
・飲食店の写真:撮影原稿(RAW/JPEG)の保管場所、撮影日、使用時の注意点(アレルゲン表記など)。
短いREADME例(抜粋): プロジェクト: 夏カタログ2024 / 最終データ: /projects/catalog2024/design/catalog_final.ai / フォント: XXフォント(商用、購入履歴: /licenses/xxfont.pdf、期限: 2026-03-01) / ビルド手順: Illustratorで開き → 書き出し → PDF(プリセット: press_high) / 備考: 画像は /assets/originals/ に保管
ファイル管理と古い版の探し方
Gitが必須ではありませんが、最低限の命名規則とフォルダ構成を決めると検索が速くなります。例: YYYYMMDD_案件名_説明_v01.ext。主要フォルダに短いREADMEを置き、重要な変更点はそこに記録してください。
古い版を探すときの実用手順:
- まずクラウドストレージ(Google Drive/Dropbox等)のバージョン履歴を確認。見つからなければ外付けHDD、メール添付、関係者のローカルコピーの順で探す。見つけた場所はREADMEに追記しておくと次に楽になります。
外部アカウント・ライセンス・個人情報の扱い
外部サービスの情報は「所有者のメール/ログインURL/権限レベル/契約更新日」の形式で記録してください。パスワードはプレーンテキストで残さず、パスワードマネージャーを使って共有する手順を明記すると安全です。引き継ぎ時に一時的に管理者を追加してから削除する方法も実用的です。
ライセンスの譲渡や個人情報の取り扱いには契約上の制約があることがあります。実行する前に契約書を確認し、必要なら専門家に相談してください(本稿は法的助言ではありません)。
引き継ぎ後に起きやすい問題と簡単な予防策: フォントやプラグインが揃っていない → 使用状況と購入情報を記す。スクリプトが環境依存で動かない → 別のマシンで一度ビルドして手順を確認。画像解像度が不足する → 元ファイルの場所を明示。引き継ぎ時は画面共有で一回動作確認を行うと効果的です。
作業時間の目安(小規模チーム想定): READMEとアクセス一覧は1〜3時間、進行中案件のパッケージ化は半日〜2日、長期保存用アーカイブ作成は数日。まずは「次に触る人が誰か」を想定して、最小限の項目を記録してください。
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