採寸済みの注文は、採寸票と商品を次の店へ渡すだけでは引き継げません。
まだ発注していない注文もあれば、メーカーへ発注済みの注文、補正中の商品もあります。代金を受け取った店と納品する店が変わるなら、誰が納品や返金に責任を持つのかも決める必要があります。
まず、今の店で終える仕事を確定します。
注文を一件ずつ確かめる
予約表、採寸票、注文書、発注記録、入金記録、補正伝票、商品の現物を照合します。注文総数だけでは足りません。
| 注文の状態 | 確かめること |
|---|---|
| 来店予約のみ | 商品や価格まで決まっているか、予約金を受け取っているか |
| 採寸済み・未発注 | 品番、サイズ、案内した納期、入金、発注を止めている理由 |
| 発注済み | 注文番号、納期、納品先、変更や取消しの条件 |
| 入荷済み | 購入者との対応、残金、試着や補正の予定 |
| 補正中 | 裾や袖の調整内容、作業担当、完成予定日 |
| 引渡し済み | 未収金、交換や再補正の約束、問い合わせ窓口 |
採寸票と現物が合わない注文は、記憶で埋めません。「購入者へ確認中」「メーカーへ照会中」と記録し、ほかの注文と分けておきます。
入学式など着用日が決まっている注文は、閉店日だけを基準に扱えません。納品と補正に必要な日数を踏まえ、現在の店で完了できるかを先に判断します。
今の店で納品まで終える方法もある
すべての注文を次の店へ移す必要はありません。発注済みの注文は現在の店が納品まで終え、次の店には新規注文だけを受けてもらう方法があります。
ほかにも、一定の日以降の注文だけを次の店へ移す方法や、購入者と話し合って現在の注文を取りやめ、次の店で注文し直してもらう方法があります。
前受金を次の店へ送っただけで、納品義務や返金対応まで移るとは限りません。注文上の立場を移せるか、購入者の同意が必要かは、申込条件と承継の方法によって変わります。判断できない注文は、契約書や申込書を示して弁護士に確認します。
学校やメーカーとの関係は別に確かめる
学生服の扱い方は学校ごとに異なります。学校から販売店として案内されている場合もあれば、店が独自に扱っている場合もあります。校章や学校独自の仕様が入った商品もあります。
別の店が同じ商品を仕入れ、同じ条件で販売できるとは限りません。後継店として案内する前に、学校とメーカーや卸へ次の事項を確かめます。
- 販売店を変更する際の手続や連絡先
- 校章、学校名、指定された意匠の扱い
- 新しい店が商品を仕入れられる条件
- 発注済み商品の納品先や請求先を変更できるか
- 学校別在庫の返品、買取り、継続販売の可否
- 補正、交換、メーカー対応の窓口
メーカーの発注システムも、現在の店のIDを渡して使い続けられるとは限りません。利用条件を確かめ、新しい店に契約が必要なら、その店の名義で手続きを進めます。
採寸情報は在庫ではない
氏名や連絡先と結び付いた学校名、学年、採寸値、購入履歴は、個人情報に当たり得ます。引継ぎの候補を探す段階で、採寸票や注文台帳を一括して渡すことは避けます。
個人情報保護委員会のQ&Aでは、事業承継に伴って取得した個人情報は、承継前に特定された利用目的の達成に必要な範囲内で利用できると説明されています。ただし、単に別の店を紹介する場合まで、事業承継と同じ扱いになるとは限りません。
誰のどの情報を、何のために、どの事業者へ渡すのかを先に決めます。事業承継に当たるか、本人の同意などが必要か、旧店舗に残す記録の範囲と保存期間は、具体的な引継ぎ方法を示して弁護士に確認する部分です。
次の店が未納品の注文を引き受ける場合でも、必要な注文の情報に限ります。過去の購入者名簿や卒業した顧客の記録まで渡す理由にはなりません。
学校別在庫には注文先と所有者を付ける
在庫は、品番と数量だけで数えず、次のように分けます。
- 特定の購入者のために取り置いた商品
- 発注済みだが購入者がまだ決まっていない商品
- 校章、名入れ、補正などを施した商品
- 一般販売にも使える商品
- メーカーや卸から借りている見本や委託品
それぞれに、所有者、仕入代金の支払状況、購入者からの入金、返品条件、保管場所を記します。現在の店が納品する商品と、次の店に買い取ってもらう在庫を混ぜないためです。
前受金の引継ぎや返金、在庫や設備を譲る場合の会計・税務処理は、契約上の扱いとは別の問題です。金額と処理日をそろえ、税理士に確認します。
購入者への案内は注文の状態に合わせる
学校、メーカー、次の店との話が固まる前に、「今後はすべて次の店が対応します」と案内するのは早すぎます。
購入者には、現在の注文を予定どおり納品するのか、合意のうえで次の店へ移すのか、取りやめるのかを伝えます。納品場所、支払先、返金、交換、再補正の窓口も明らかにします。
店に残る価値は顧客名簿だけではありません。採寸から発注、入荷確認、補正、引渡しまでの手順を、個人情報の入っていない見本で記録すれば、次の店は必要な人員と時間を判断できます。学校やメーカーから受け取った非公開資料は、許可なく複製しません。
相談するときは学校名や採寸値を伏せる
引継ぎ方を決めきれない場合は、注文の状態と件数、入金の有無、希望する閉店時期、関係先へ未確認の事項を整理します。この段階では、学校名、生徒や保護者の氏名、連絡先、注文番号、採寸値は不要です。
Supplytechnoの匿名相談を利用する場合も、個人を特定できる情報を伏せたまま相談できます。学生服を扱ってきた経緯を事業の物語として投稿するなら、個別の購入者や学校との非公開の取り決めではなく、残したい仕事や地域で果たしてきた役割を中心にします。
採寸済みの注文を渡せるかは、一括では決められません。まず現在の店で終える注文を定め、その後に契約、学校やメーカーとの関係、個人情報、前受金を一件ずつ整えます。