年度末で学習塾を閉じる予定でも、問い合わせや体験授業の申込みが続けば、どこで新規募集を止めるべきか迷います。受け入れを続ければ収入は残りますが、閉鎖予定日より先まで授業や進路相談を期待される可能性があります。
一人または少人数で運営する塾では、通常授業のほか、振替、定期テスト対策、保護者面談、受験前の質問対応まで塾長が担っていることもあります。教室を閉める日だけを決めても、すでに引き受けた仕事が同時に終わるとは限りません。
最初に行いたいのは、在塾生との約束を完了できる範囲まで、新しい申込みを止めることです。
閉鎖日ではなく、四つの日付を決める
終了までの日程は、一つではありません。少なくとも次の四つに分けて考えます。
- 新規入塾の受付を止める日
- 追加講座や次期教材の申込みを止める日
- 通常授業を終える日
- 振替、貸与物の返却、精算、問い合わせ対応を終える日
すべてを同じ日に設定すると、最後の数週間に振替や返却が集中します。通常授業の終了後にも整理期間を設け、教室の退去日や契約終了日と矛盾しないかを確認します。
募集を止める日が決まったら、自塾のウェブサイト、掲示物、広告、申込フォームなど、管理できる募集表示も見直します。体験授業を受け付けない場合は、問い合わせ後に初めて伝えるのではなく、申込み前に分かる表示へ改めます。
生徒ごとに残っている約束を確認する
次に、生徒一人につき一行で確認できる一覧を作ります。記載するのは、在籍コース、支払い済みの期間、予定している残りの授業、未消化の振替、申込済みの講習、受験予定、個別に約束した面談や質問対応、預かり書類や貸与物です。
契約書や申込書だけでなく、メール、連絡アプリ、面談記録も確認します。「試験前に補講する」「苦手単元を最後に復習する」と口頭で伝えていた場合も、保護者や生徒が予定に含めていることがあります。
一覧にした結果、残りの期間と人員では終えられない授業があるかもしれません。その場合は、一方的に回数を減らすのではなく、日程の組み直し、別の講師による実施、未実施分の精算などを候補として、生徒ごとに協議します。どの対応が可能かは契約内容や事情によって異なるため、先に一律の結論を出さないことが大切です。
募集停止後に受ける相談の範囲を決める
長期在籍を前提とする通常コースを止めた後も、兄弟姉妹からの相談や短期受講の問い合わせが来ることがあります。受け付ける場合は、終了日までに確実に提供できる内容だけに限定し、塾を閉じる予定、受講できる期間、授業内容、終了後の対応を申込み前に伝えます。
「状況によっては継続できるかもしれない」といった含みを残すと、保護者との認識がずれやすくなります。説明した内容は案内文や申込記録にも残します。十分な授業期間を確保できないなら、相談だけ受けて入塾は案内しないという線引きも必要です。
受験生と非受験生では約束の終点が異なる
閉鎖予定が入試時期と重なる場合、全員を同じ日に終了すると、受験生に約束した対応だけが途中になることがあります。一方で、受験が終わるまで全コースをそのまま残せば、教室や講師の負担が予定以上に続きます。
受験生については、どの試験まで授業を行うのか、出願相談や結果発表後の面談を含むのかを確認します。非受験生については、学校の学期、教材の単元、定期テストなど、すでに案内している区切りを基準に終了日を決めます。
これは生徒に優先順位を付けるという話ではありません。生徒ごとに異なる約束の終点を、実行可能な日程へ置き直す作業です。
保護者への案内には個別の残数を添える
閉鎖の案内を出す前に、問い合わせを受けたときの回答をそろえておきます。案内には、閉鎖予定日、通常授業の終了時期、振替や申込済み講習の扱い、支払い済み費用の確認方法、貸与物や書類の返却方法、問い合わせ窓口と対応期間を記載します。
全体への案内だけでは、各家庭が自分の残り授業を判断できません。個別に確認した授業回数や対応予定も伝え、塾側の記録と認識が一致しているかを確かめます。説明した日付と内容は記録に残しておくと、その後の調整を進めやすくなります。
転塾先の紹介と学習記録の移管は分けて考える
近隣の塾や家庭教師について、公開されている情報を候補として伝えることはできます。ただし、受入状況や指導方針、相性は変わり得るため、転塾できると約束せず、保護者自身に確認してもらいます。
成績、学習歴、連絡先などを別の事業者へ渡すことは、候補を案内することとは別の手続きです。塾側の判断だけで顧客名簿や学習記録をまとめて提供せず、本人や保護者の意向、現在の契約やプライバシーポリシー、適用されるルールを確認します。必要であれば、保護者へ学習状況をまとめた書面を渡し、転塾先への提出は家庭に委ねる方法も検討できます。
塾内で決めることと、個別確認が必要なことを分ける
募集停止日を決める、生徒ごとの残り授業を数える、説明の順番を整えるといった作業は、塾内で進められる運営上の整理です。
一方、前払い授業料や未実施分の精算、解約条件、個人情報や学習記録の扱いは、契約内容や個別事情によって判断が変わります。講師を雇用している場合の対応、賃貸物件の解約、閉鎖に伴う税務処理についても、それぞれの契約先や、必要に応じて弁護士、税理士、社会保険労務士などへ確認してください。一般的な例だけを根拠に、返金額や通知期限を決めることはできません。
新しい約束を止めると、在塾生に使える時間が見える
小さな塾を閉じる準備では、設備を片付ける前に、在塾生との約束を終えられる形へ仕事量を収める必要があります。新規募集の停止は、今いる生徒の授業や振替に必要な時間を確保するための線引きです。
まだ塾名を出して相談できない段階なら、匿名相談では名称や地域、生徒を特定できる情報を伏せたうえで、予定時期、残り授業、振替、申込済み講座の状況を整理できます。閉鎖や縮小を経験した方は、何を先に止め、どの約束を最後まで残したかを事業の物語として投稿することもできます。結論が固まっていなくても、「これから受ける仕事」と「すでに終える責任がある仕事」を分けるところから始められます。